福岡のFMラジオ局 LOVE FM。周波数76.1MHz。九州北部広範囲をカバーする10ヶ国語の多言語放送局。
TUE 21:00-21:30, Podcast
2016.09.11[Sun] 15:30
どーもチャラDこと番組ディレクターです。
ヨーロッパ企画第35回公演「来てけつかるべき新世界」が、本格的に始まりました。
これから全国の皆さんのもとへ、そして、ここ福岡にもやってきます!
10月1日〜2日、場所は福岡・天神、ソラリアステージ6F西鉄ホールです。
http://www.europe-kikaku.com/projects/e35/
本当楽しみです!!
今回は、新作公演スタート記念(?)
9月10日の放送で、石田さんと団長にイジられた
大人の恋愛ラジオドラマ「イシダカクテル」チャラD作品を
公開させていただきます。
これまでの作品も、皆さんのご希望に応じて、今後公開を検討してみたいと思いますので、お声がけ頂ければと思います。なんせ4年間やっているので、100作品以上ありますので(笑)
ご感想や、団長のようなツッコミもツイッターなどで募集しております!
ふたつ、重なりあう
夕焼けに照らされ、浜辺にのびる、ふたりの影。
その影を「記念に」と言って、彼女は写真におさめた。
少し離れたところでは、この夏、こんがりと日焼けした少年たちが、脇にサーフボードを抱えて、岸にあがってくる。
遠くを見ながら彼女は言った。
彼女 「ねぇ、どんな顔をすればいい?」
彼氏 「いつもの顔でいい」
彼女 「いつもの顔って、どんな顔?」
彼氏 「いつものだよ」
彼女 「わかんない」
わかろうとしない彼女は、目をつむる。
先ほどよりも、さらに長く伸びたふたつの影がひとつに重なりあう。
この夏の暑さのように、その影絵は、いつまでも続いた。
〜場面転換・店内のシーン〜
マスター 「今日は早いね」
バーに、腰掛けようとする彼女にマスターは声をかけた。
「早いね」と声をかけるも、この店での話。
時刻は10時30分を過ぎていた。
広い店内の奥では、乾杯の発声が響いた。
彼女 「この時間に、団体さん?」
マスター 「久しぶりに来てくれたお客さんでね、4年ぶりかなぁ」
彼らは、カウンターにひとりの女性が座ったことなど気にならないほど、盛り上げっていた。
マスター 「それで何にする?」
彼女 「じゃ、最高のジプシーを」
マスターは、彼女のオーダーにゆっくりと頷いた。
マスター 「だけど、寂しくなるなぁ」
彼女 「わかっていたことよ」
マスター 「まぁ、そうだけど」
彼女が次の言葉を選ぼうとしたとき、カウンターに置いてあったスマホの画面が光った。「もうすぐで着くからね」 というメッセージとともに、光は彼女の顔を照らした。
店内の曲が変わる。
おしゃべり好きのマスターのトークは、今宵も軽快なラップのようにバーカウンターを覆う。
マスター 「この前来たご夫婦は、この辺りでよくデートをしていたらしく、通っていたお店がなくなったと言って、うちに寄ってくれた。夫婦生活15年、付き合っていた頃の話もしながらワインをあけていたよ。最近、久しぶりにデートをしたらしく、朝方の浜辺で…」
マスターは来客に気づいた。
マスター 「お疲れ。今日はこの席が君の席だ」
マスターの声に、彼女は彼に気づく。
椅子に腰掛けた彼は彼女に声をかけた。
彼氏 「今夜は、どんな顔をすればいい?」
彼女 「いつもの顔で」
彼氏 「いつもの顔って?」
彼女 「私に向かって嘘をつく顔よ」
彼は笑みを浮かべて答えた。
彼氏 「あぁ、わかった。今夜はとことん嘘っぽい顔をしよう。マスター、ラモンジンフィズを」
彼女 「マスター、私にはバイオレットフィズを」
大きな彼女のバックには、重さ以上の想いがつまり、今にもはちきれそうだ。
彼氏 「明日のフライトは?」
彼女 「気にしないで。それより、あなたは今夜、とことん嘘っぽい顔をしなきゃいけないの」
彼氏 「あぁ、そうしよう」
言葉にできない感謝の想いでいっぱいのラモンジンフィズと
私を覚えていてと言わんばかりの綺麗で妖艶なバイオレットフィズ。
ふたつのグラスが重なりあう。
悲しむ顔を、夕焼けの浜辺に、おきざりにして。
いしだ ごうた
1979年6月3日生まれ、愛媛県出身
俳優/ラジオパーソナリティ
趣味/写真・ラジオ鑑賞
特技/バレーボール
99年、第2回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほぼ全本公演に出演。
多数の外部出演にくわえ、イベントでのMCや、ラジオパーソナリティとしての活動も多い。
また、「ヨーロッパ企画の暗い旅」などのバラエティでも活躍。