福岡のFMラジオ局 LOVE FM。周波数76.1MHz。九州北部広範囲をカバーする10ヶ国語の多言語放送局。
TUE 21:00-21:30, Podcast
2014.09.08[Mon] 07:00
いやあ、申し訳ない。本当は一個一個紹介したいけど、僕が悪いよね。一挙公開。締めまくりの一杯たち。
特別なソルティドッグ After Story 締めの1杯
ドアを開け、眼を真っ赤にした彼女がカウンターの席に座る。
女性「お水を1杯くださる」
顔を上げた彼女に驚くマスター。
マスター「どうも人違いのようだ」
マスターは彼女に聞こえないように、僕に囁いた。
男性「え?!」
思わず出た僕の言葉に、彼女が気づく。
女性「ごめんなさい。今夜は少し悲しいことがあって」
僕が声を発するまで、彼女は僕の存在に気づいていなかったのだろう。
男性「あ、いえ。こちらこそ」
マスター「どうぞ、お水です。それと、これはあなたに」
マスターはお水と、グラスの縁に塩のついていないソルティドッグを差し出した。
今日、僕は彼女と別れた。
どうしようもない気持ちになり、このバーにやってきた。
「嫌や、嫌や」という気持ちは、マスターの特別なソルティドッグで少し和らいだ。
そんなときに来店した彼女。
僕の瞳に少し涙が残っていたのかもしれない。
お店に入ってきた彼女は、別れた彼女に見えた。
だが、入店した彼女は、別れた彼女に似た別の女性だった。
女性「マスター、これは?」
マスター「それは、特別なカクテルです。よね?」
マスターは僕に確認した。
男性「ええ」
マスター「それを飲みきったら、ご一緒にいかがですか?」
マスターは僕に新しいカクテルを差し出した。
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新しいカクテルは、新たな出会いを象徴し、そして全く同じ未来を辿る道しるべなのだ!
ワンピース After Story 締めの1杯
【大人になることは恋愛を多く経験することだと思っていた10代】
「そんなことないよ」
僕の部屋に、残していった彼女のワンピースが僕に語りかける。
もう彼女は、この部屋にはいない。
もう彼女は、この部屋にもどってくることはない。
わかっているのだが、部屋の隅々に彼女の思い出がよみがえる。
「未練がましい男ね。私なんかより、あなたにはきっといい人がいる」
声にならない声が聞こえてくる。
重症だ。
こんな日がいつまでも続くのだろうと思っていた、彼女に出会うまでは。
【恋の病に効く薬は、恋だと知った20代】
人を好きになることよりも、人に惹かれることを覚え、恋をする。
女性「あなたはやさしいのね」
出会ったばかりの彼女が僕に囁く。
同じことを、これまでにも何度となく言われてきた。
そして、彼女は僕に告げる。
女性「他に好きな人ができたの」
【人を好きになることを覚えた30代】
僕と付き合う女性は、いつも僕よりも半歩前の人生を歩んでいるように思えた。
なぜ彼女たちは、次を求めるのだろう。
わからない。
そして、人を好きになること。
恋をすること。
僕は、恋愛の経験を重ね、大人になったのだろうか?
わからない。
ただ、人を好きになることだけは覚えた気がする。
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結局生きていくことっていうのは色んなものをそぎ落としてルーチン化されることなのかもしれない。ガタガタ言わずに肉を食え。
いしだ ごうた
1979年6月3日生まれ、愛媛県出身
俳優/ラジオパーソナリティ
趣味/写真・ラジオ鑑賞
特技/バレーボール
99年、第2回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほぼ全本公演に出演。
多数の外部出演にくわえ、イベントでのMCや、ラジオパーソナリティとしての活動も多い。
また、「ヨーロッパ企画の暗い旅」などのバラエティでも活躍。