福岡のFMラジオ局 LOVE FM。周波数76.1MHz。九州北部広範囲をカバーする10ヶ国語の多言語放送局。
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2019.03.08[Fri] 00:00
2月17日の放送番組から気になった一部の内容を紹介します。
ゲスト ミュージアムプロデューサー 砂田光紀 様
山本:「雛(ひいな)のまつり」の「ひいな」は、お雛様の「ひな」ではなくて「ひいな」というのはどうしてなんでしょうか?
砂田:普通はひなまつりとか雛人形とかいう言い方をしますが、古い絵巻物とか文書とかを見るとやはり「ひいな」と表記しているものが多いということで、今は雛人形で定着しているけど、ひなまつり、でもひいなの祭り、古式ゆかしい言葉を使おうじゃないかと「ひいな」を使っておられるそうです。
山本:今でももう「ひいなのまつり」で定着しましたね。
砂田:そうですね。可愛いですよね。
山本:可愛いと思います。子どもたちも言いやすいし。お人形たちもたくさん並べられていますけれど、どうやってあれだけのお人形が集まってきたんでしょうか?
砂田:こういったひなまつりを主催しておられる人形研究家の瀬下麻美子さんは、個人的にこれを全部買い集めているんです。
山本:じゃあ個人のものなんですか?
砂田:もういらなくなったものを、じゃあくださいと言っているわけではないんですね。ですから人形の時代性とかグレードとかをよく判断しながら集めていますので、飯塚の雛人形は非常に質が良くてバラエティに富んでいると。もちろん高価なものだけじゃないんです。例えば「雛軸」と言いますけど、例えば炭鉱住宅に昔暮らしていて、一生懸命働いていて、でも雛人形買えないなというときに、そのお父さんお母さんがじゃあこの子のために何かないかなと、そういう方々のために掛け軸にお雛様の絵を描いて、それを飾ってあげたと。それにみんな目をつけておもちゃ屋さんはせっせといろんな形の雛軸を作るんですけど、その雛軸にも非常に素朴なものから、浦島太郎の絵がなぜか下に書いてあったりとかするんですけど、そういうモチーフをつけて雛軸と言うものを作っていっぱい売っていた、それが今でもたくさん残っています。そういうものを入手、展示もしますし、逆にもう一つ大きな特徴がありまして、九州は大名家の雛人形が良く残っているんです。例えば東北地方とか行きますと、雛人形というのはかなり少なくて、幾多の戦乱とか飢饉とかいろんなときに焼かれたり捨てたり流出したりが多かったんですが、九州はご存知のように島津であったり立花であったり、あるいは久留米の有馬であったり、そういったところが持っていた雛人形が焼失・流出しなかったんですね。
山本:それは貴重ですね。
砂田:ですから、今でも大名家の末裔の方が持っていたり、あるいは流出したとしても地域に残っていたりというのがありますので、出物でそういった関連の方がお持ちの物が売りに出たりとか、ちょっとこれどうしたらいいのかわからないという方も多いので、それを引き受けて、それが展示されるわけですから、非常にグレードの高い人形も手に入るわけなんですね。
山本:なるほど。私はいろんなお家の人が「うちのもどうぞどうぞ」とそうやって集まって来たのかと思っていたんですけど。
砂田:そういうやり方をされるところも多いので、それはそれで私はとても良いことだと思いますけど、でも飯塚の瀬下さんの人形の特徴は、一つはそうやって一つ一つ吟味して集められた人形、古今東西問わずですね。それを上手にアレンジしながら展示紹介していく。あと雛道具のコレクションが半端ないんですね。これがいわばミニチュアですね。当時の所帯道具とか、宮中あるいは大名家のミニチュアを雛の道具として使っておられる、それだけ展示しても非常に迫力があるんで、よく雛道具の展示室も作られるんですけど、これをご覧いただくと、精緻さとか美しさに皆さん感動されますね。