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  • 【毎週日曜日18時更新(たまに変更)】京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画による福岡発オリジナル番組『こちヨロ(こちらヨーロッパ企画福岡支部)』のPodcastオリジナル番組。ヨーロッパ企画の情報をはじめ、ラジオ番組の裏側から、ふたりの日常や、皆さんから頂いたメッセージで成り立つ番組。自称「(ヨーロッパ企画ファンにとっての)沼」。Podcastのオリジナルの出演は、【ヨーロッパ企画】の石田剛太と、ダンスカンパニー【男肉 du Soleil(おにく ど それいゆ)】の団長こと池浦さだ夢。番組情報をメッセージはtwitterアカウント:@kochiyoro / 番組への参加はメールでkochiyoro@gmail.com で

    [ヨーロッパ企画HP] http://www.europe-kikaku.com/


イシダカクテル『絵画のようなバー』

2020.03.16[Mon] 19:00

こちらヨーロッパ企画福岡支部(通称 #こちヨロ

ラジオ版をお聞きいただいている皆さんにはお馴染みの、

ヨーロッパ企画・石田剛太が全監修をする

オトナの恋愛ラジオドラマ【イシダカクテル】

これまでお送りした過去の作品の原稿をお楽しみください♪

 

今回は2017年11月27日オンエアの作品
『絵画のようなバー』です。

 

この作品は、この年実施された、ヨーロッパ企画第36回公演『出てこようとしているトロンプルイユ』の世界観をイメージしてできた恋愛ラジオドラマです。ただこの作品は、本編の公演とは何も関係ないことをあらかじめご了承ください。

『絵画のようなバー』

(革靴の足音。止まって、バーの扉を開ける_音)

 

重たいその扉を開けると
男はいつも思った。
このバーは、絵画のようだ

カウンターしかない
そのバーには
青いワンピースを着た
ボブカットの女性が
ひとり背を向けて座っていた。

マスターが僕に
微笑んでくれたおかげで、
僕の目の前にある光景が、
絵画ではなく現実のものだと
認識できた、

というのはいささか
言い過ぎかもしれないが、
それほどまでに
このバーは絵画的だった。

 

カウンターに座ると
マスターは黙って
コニャックを
ブランデーグラスに注いだ

 

「このバーでコニャックを
飲んでいると、まるで1930年代の
パリにトリップしたみたいだ」

「あなたは1930年代のパリに
行ったことあるの?」

 

女は少しいじわるに
笑ってそう言った

 

「もちろんないよ。
でも、君も行ったことないだろ?」

「ふふふ、おかしな人。
マスターそろそろ失礼するわ」

「もう帰るの?
終電は過ぎてるんじゃない?
ほら、あの時計を見て。
もうとっくに0時を回ってる」

「あれ?
私の腕時計はまだ11時過ぎよ。
あの時計、止まってるんじゃない?」

「止まってるわけじゃない。
よく見て、あの時計、実は絵なんだ。

『0時を過ぎた時計の絵』。
動くはずもないよね」

「ほんとだ、_絵ね(笑)
なんであんな絵が飾ってあるの?」

「つまり、
このバーに入った時点で、
もう終電はないってことを
言ってるんじゃないかな。ねえマスター」

 

マスターは僕らを見て

黙ったまま微笑んだ

 

「トロンプルイユって知ってる?」

「トロンプルイユ?」

「フランス語でだまし絵のことを言うんだ。
まさにああいう絵のことだよ」

「ふーん、だまし絵ね」

「どうかな?少しの時間だけ、
だまされてみない?」

「ふふふ」

 

 

それから二人は
ラブソング一曲分の
会話を楽しんだ

「趣味は、映画や演劇を観に行くことかな?」

「演劇?」

「このすぐそばに
西鉄ホールって劇場があるんだ。
そこでやってる演劇は
間違いないものばかりだよ」

「チケットはどこで売ってるの?」

「どこにも売ってないんだよ」

「え?」

「恋をしたら、
ある日ポケットに入ってるのさ」

「ふふふ」

「つまり、
君は劇場には一人では
入れないってことさ」

「ポケットに手を突っ込むのが
楽しみになってきた」

 

二人はカウンターに座って
ずっと話し続けた

 

「君とはなぜか話せる」

「そうね、
まるでこうなることが
決まっていたみたいに…」

「こうなることが
描かれていたみたいに…」

 

重い扉を開けて、
誰もいないバーに男が一人
入ってきた。

 

マスターはにっこりと微笑んだ。
カウンターに座ると
絵が飾ってあるのが男の目に入った。

バーのカウンターに
男性と青いワンピースのボブカットの女性が
座っている。

 

絵だった。

 

二人は楽しげに
会話してるように見えた。

とてもいい絵だな、

男はそう思った

あとがき

いかがでしたでしょうか?

原稿データに近い形での公開になります。

今回は、本編のドラマが放送されたあとの、石田剛太と番組構成作家・団長のやり取りの模様を音声でお楽しみください♪ (原稿を読み終わってからお聞きいただくことを、おススメします!)

皆さんのご感想は、Twitter ‎@kochiyoro もしくは、 #こちヨロ #イシダカクテル で♪(タイトルを書いてもらうと、より助かります!)

DJ紹介

  • 石田剛太 (ヨーロッパ企画)
  • Gouta Ishida (Europe-Kikaku)
  • いしだ ごうた
    1979年6月3日生まれ、愛媛県出身
    俳優/ラジオパーソナリティ
    趣味/写真・ラジオ鑑賞
    特技/バレーボール

    99年、第2回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほぼ全本公演に出演。
    多数の外部出演にくわえ、イベントでのMCや、ラジオパーソナリティとしての活動も多い。
    また、「ヨーロッパ企画の暗い旅」などのバラエティでも活躍。

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